豆知識

また繰り返されたエレベーター事故

建物所有者に損害賠償責任 !?

【シンドラーエレベーターの事故】
2006 年 6 月 3 日午後 7 時頃、東京都港区共同住宅「シティハイツ竹芝」12 階のエレベータにおいて、 男子高校生がエレベータの床部分とエレベータ入り口の天井に挟まれ死亡するという事故が発生した。
亡くなった男子高生は同マンションの 13 階の住人と一緒に 1 階からエレベーターに乗り、 この時自転車と共に、扉に背を向けた状態で乗り込んでいた。 エレベーターが 12 階に停止したので男子高生が自転車にまたがって、そのまま後ろ向きで降りようとしたところ、 エレベーターの扉が開いたまま突然上昇したため、男子高生はエレベーターのかご床部とエレベーター入口の外枠天井部との間に挟まれ約 40 分後に救急隊員に救助されたが、全身打撲と頭部骨折などで間もなく死亡した。
この事故の 2 年後、死亡事故原因が、補助ブレーキ不良で扉が開いたまま急上昇したのが原因だったことから、国土交通省が 2008 年 9 月に補助ブレーキを義務付ける政令を改正した。
また、国土交通省は扉が開いたままエレベーターが動いた場合、自動的に運転を制御する補助ブレーキの取付けを義務付ける改正建築基準法施行令を 2009 年 9 月 28 日に施行し、同日以降に新規着工する物件から適用が始まっている。
参考<ウィキニュース>
【また繰り返された事故】
シンドラー社製エレベーターでまた死亡事故が起きた。2012 年 10 月 31 日午後、金沢市内のホテル「アパホテル金沢駅前」で、エレベーターに乗ろうとした清掃員の前多(まえだ)さん(63)がカゴ部分と扉上部分の枠に挟まれ死亡した。
シンドラー社のエレベーターをめぐっては 2006 年 6 月、東京都港区内で男子高生(当時 16)が死亡する事故が起きている。二つの事故はどちらも扉が開いたままカゴが急上昇したことが原因だったと調査結果がでている。悲劇はなぜ、繰り返されたのだろう・・
2006 年 6 月に起きた男子高生の死亡事故は、国土交通省などでの調査結果において、エレベーターのブレーキ部分の磨耗と経年劣化によって起きていたことが分かっている。これを受けて国土交通省は建築基準法を改正し、2009 年 9 月 28 日以降に設置するエレベーターには通常ブレーキのほかに、扉が開いたままカゴが上昇・下降するのを防ぐ補助ブレーキの設置を建物所有者に義務付けしたのだが‥。
ところが、今回の事故が起きたエレベーターが設置されたのは 2009 年の 11 年前にあたる 1998 年。ブレーキの磨耗を検知するセンサーは取り付けたものの、「二重の安全装置」に当たる補助ブレーキは設置していなかった。国土交通省は 12 年度の単年度事業として補助ブレーキを付ける際の助成金制度を急遽設けた訳であるが、あくまで任意という。2009 年以前設置のエレベーターは『既存不適格』という位置付けで、「義務化の対象外」にあたるということなのだそうです。
参考<日経新聞H24.11/1>
【求められる安全対策】
マンションやビルに設置されている設備の中で不具合が発生した際に人命に係わる自己になる可能性が高いのがエレベーターである。そういった意味では、エレベーターの安全対策はマンション管理組合・ビルオーナーにとって最も重要な取り組みの 1 つである。昨年 10 月末に起こった石川県のホテルのエレベーター事故。平成 18 年に発生した「シティハイツ竹芝」の事故と同様にシンドラー社製エレベーターであったことから、同社に対する批判の声が強まっている。今回の事故原因については、今後解明されることになるであろうが、同じような事故が発生した場合、民法においてはマンション管理組合やビルオーナーに対して損害賠償責任が発生する。民法第 717 条における土地工作物責任では、占有者が損害発生を防止するために必要な対策を施していたということが立証されれば「免責される」と明記されており、その場合においては建物所有者が無過失責任を負うことになる。もちろん無過失責任を負うからといって損害賠償責任の全てを背負うことは無いが、例えば、エレベーター保守メンテナンス会社から設備の不備、或いは、部品交換の必要性を指摘されていたにも係わらず放置していたのであれば、その責任の多くを建物所有者が負うことになる。